
2025年3月16日 谷口 怜
長期優良住宅認定制度は、平成21年6月(2009年)から開始し現在までで約16年以上が経過し認定戸数も増え続けており建築業界だけではなく一般の方にも少しずつ認知されつつあるのではないでしょうか?
住宅の新築をする際に「長期優良住宅」の認定を受ける税制、金利優遇、補助金など特にお金の面で様々なメリットがある一方で、建築会社よっては認定を受けるための仕様変更のために大幅なコストアップが必要な場合もあります。
※当社では基本性能で「長期優良住宅」の認定取得ができます。
今回のテーマでは「長期優良住宅」についてメリットやデメリットなども含めて解説したいと思います。
長期優良住宅とは
長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅の建築・維持保全に関する計画を所管行政庁が認定するものです。
大きくわけて次の5つの基準を満たすことで、税制上の優遇措置や補助金による支援を受けることができます。
- 長期に使用するための構造及び設備を有していること
- 居住環境への配慮を行っていること
- 一定面積以上の住戸面積を有していること
- 維持保全の期間、方法を定めていること
- 自然債への配慮を行っていること
これらの全ての措置を講じ、必要書類を揃えて所管行政庁へ申請することが必要あり、工事完了後も維持保全計画に基づいた点検も必要になります。
長期優良住宅の8つの「認定基準」(一戸建て新築)
1.劣化対策
「数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること」
劣化対策(構造躯体)等級3の基準に加え、床下空間の確保及び、床下・小屋裏の点検口の設置などが必要になります
2.耐震性
「極めて稀に発生する地震に対し、継続利用のための改修の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ること」
構造などに応じた耐震等級(倒壊等防止)の等級1~3の取得など必要になります。
3.省エネルギー性
「必要な断熱性能等の省エネルギー性が確保されていること」
断熱等性能等級5、かつ一次エネルギー消費量等級6以上必要
4.維持管理・更新の容易性
「構造躯体に比べて耐用年数が短い設備配管について、維持管理(点検・清掃・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること」
5.居住環境
「良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること」
地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内にある場合には、これらの内容と調和を図ること。
6.住戸面積
「良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること」
原則的に一戸建て住宅の場合75㎡以上必要かつ、1階の床面積が階段部分を除いて40㎡以上確保する必要があります。
7.維持保全計画
「建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること。」
構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分、給排水設備について30年以上のメンテナンス計画を立て実施する必要があります。
8.災害配慮
「自然災害による被害の発生の防止又は軽減に配慮されたものであること」
災害発生リスクのある地域の場合はリスクに応じた対策措置が必要になります。
ー「長期優良住宅」メリットー
1.税の特例措置が拡充
■住宅ローン控除 限度額の引き上げ
住宅ローン控除は住宅を購入した場合に所得税の減税が受けられる制度になります。
長期優良住宅の認定を受けることで受けられる控除額が増えます。
2024年の改正で省エネ基準に適合しない建物は控除が受けられなくなりましたので注意が必要です
※新築住宅の場合 控除率0.7% 控除期間 13年(2025年末までに入居する場合)
住宅の性能 | 控除対象限度額 | 最大控除額 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 4500万円 | 409.5万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 3500万円 | 318.5万円 |
省エネ基準適合住宅 | 3000万円 | 273万円 |
その他の住宅 | 0万円 | ー |
※住宅ローンの借入額や所得により控除額が異なり、年度ごとに税制が変わる場合があります。詳しくは個別にご相談頂くか、行政のホームページ等でご確認ください。
国土交通省 住宅ローン減税ページ〈令和6年度税制改正案内ページ〉
■登録免許税がの税率が引き下げられる
登録免許税とは、不動産の登記にかかる税金のことです。登録免許税は土地と建物に課税されます。
土地や建物を購入する際には、購入者のものであること公の帳簿(登記簿)に記載し権利を明確にすることをといいます。
新しい建物に新しく所有者を登記する保存登記、土地を購入する際には、他の人から購入者へ登記を移転する移転登記行います。
保存登記費用
0.15% → 0.10%
移転登記費用(戸建て)
0.30% → 0.20%
■不動産取得税の控除額が増額される
不動資産取得税とは、土地や建物等を新築、売買、贈与などで取得した場合にかかる税金で、不動産を取得した時に一度だけかかる税金です
計算方法
(不動産の評価額ー控除額)×税率(軽減税率3%) となります。
仮に建物の請負契約金額が3000万円だとすると、不動産評価額は50~70%になるため1500~2100万円となります。一般住宅の場合、1200万円の控除額を差し引いて3%を乗じると9~27万円となります。
長期優良住宅の場合は控除額が100万円増額されますので、100万円×3%=3万円 不動産取得税を軽減することができます。
■固定資産税の減税措置を長く受けられる
固定資産税は毎年1月1日現在に、土地と家屋、償却資産(これらを総称して「固定資産」といいます)を所有している人が、その資産の価格を基に算定された税額を納める税金です。
2026年3月31日までに新築された住宅は、3年間の減税措置として固定資産税が1/2と半分になります。長期優良住宅の場合はこの期間が、5年間に延長され減税期間を2年間多く受けられます。
固定資産税(建物)の計算方法は
不動産の評価額×税率1.4% となります。
仮に建物の請負契約金額が3000万円だとすると、不動産評価額は50~70%になるため1500~2100万円となります。これに税率1.4%を乗じると 21~29.4万円が1年間の固定資産税額となります。
この1/2が減税される期間が2年間増えますので、
21~29.4万円 × 1/2 × 2年間 = 21~29.4万円
の減税措置を受けることができます。
2.地震保険料の割引
長期優良住宅では、認定基準に定める耐震性が求められます。このため住宅の耐震性に応じた地震保険料の割引を受けることが可能です。
地震保険料の耐震等級割引
耐震等級2 → 30%割引
耐震等級3 → 50%割引
免震建築物 → 50%割引
※保険料は保険会社により異なります。詳しくは保険会社にお問合せください。
耐震性能についてご興味ある方はコチラの記事もおススメです
「耐震性能、構造計算に関する3つのポイント」
3.住宅ローンの金利優遇が受けられる
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する、最長35年の長期固定金利の住宅ローンです。長期優良住宅の認定を取得することで次の金利の引き下げを受けることができます。
フラット35の借入金利を
当初5年間 0.75%引き下げ
条件に該当し「フラット35子育てプラス」利用できる若年世帯または子どものいるご家族の場合
フラット35の借入金利を
当初5年間 1.00%引き下げ
仮に借入額4000万円、金利1.94%(フラット35 2025年3月現在金利)で総支払額を計算比較すると
当初5年間、0.75%引き下げ
→ 161.8万円
当初5年間、1.00%引き下げ
→ 215.6万円
160万円以上、支払い額が変わることになります。
また、長期優良住宅の認定を取得した場合のみ「フラット50」という全期間固定金利住宅ローンを利用することもできます。返済期間の上限が50年間、住宅売却の際に、借入金利のまま購入者へ住宅ローンの返済を引き継ぐことができるのが特徴です。
※ただし「フラット35」と比べて完済時年齢が高くなり、総返済額が増加する可能性があります
4.「子育てグリーン住宅支援事業」補助金が増額される

2025年度の国の新築に対する補助金制度が「子育てグリーン住宅支援事業」です。
長期優良住宅の認定を受けることで、一般住宅の場合より補助額が増額されます。
補助対象住宅 | 一戸あたりの補助額 | 古家の除却を伴う加算(建替え) |
GX志向型住宅 | 160万円 | なし |
長期優良住宅 | 80万円 | 20万円 |
ZEH水準住宅 | 40万円 | 20万円 |
※詳しく「子育てグリーン住宅支援事業」ホームページをご確認下さい
当社では基本性能で「GX志向型住宅」のレベルを満たしていますので、長期優良住宅より更に補助額を多く受け取ることができます。
ー「長期優良住宅」デメリットー
1.認定を取得するために時間やお金がかかる
長期優良住宅の認定を取得するためには、認定申請書や添付書類の作成、設計図書、各種計算書など、さまざまな書類を作成し揃える必要があるため時間がかかります。またこれらの書類作成費用や申請手数料などが一般的に20~30万円程度必要になります。
2.認定を受けるための仕様変更で余分にお金がかかるケースがある
当社では、基本性能で「長期優良住宅」の認定に必要な性能を満たしていますので、追加費用は発生しません。しかし一般的に認定基準を満たすためには通常よりも建築費用がかかり目安としては2割程度建築価格があがるといわれています。
3.お住まいになってからも維持保全計画に基づいた定期点検・メンテナンスが必要
最低10年に一度の定期点検や、その結果にもとづくメンテナンスが義務付けられており、所管行政庁は抜き打ちでチェックを行っています。その際に指摘を受けた場合、認定が取り消される恐れがあります。
ー まとめ ー
長期優良住宅の認定を取得することで、減税、保険料の減額、住宅ローン金利の優遇や補助金などを受けることができます。一方で申請のための時間やお金がかかること、建築費用に割増費用がかかる建築会社があることなどを考慮すると、計画的に、そして慎重に建築会社を選ぶことが大切です。
当社では社員建築士と社員大工が在籍しており、家づくりをサポートしています。長期優良住宅の認定取得実績も数多くあります。気になった方はお気軽にご相談ください。

2025年3月16日 谷口 怜